⑤ブラック企業にはリアルブラックな人もいるんです…

我慢して片道2時間の遠い派遣先に1年ほど通いました。

色々と辛いこともあったんですが、予想外に楽しい1年だったんですよね。

これならもっと続けられるぞと思いきや大事件が訪れます。

社長が現場に出るだけならまだしも、とんでもないことが起こります。

 

ついに会社の経営続行不能、合併される・・・

「社長が現場に出る」と大発表があった翌月の定例会だったと思います。

社長が遅刻してやってきました。

 

そしたら、普段は穏やかで絶対に怒らないSさんが、社長にブチ切れたんです。

社長を呼び捨てにして、涙を流しながら言いました。

「おい、◎◎! みんながつらい時に、なんでお前は遅刻なんだよ。ふざけるなよ!」

社長はSさんに平謝りしてました。

 

新人のみんなも、普段穏やかなSさんが激怒したのを初めて見て、ビックリ仰天して、何も言わず下を向いてます。

僕もその日はSさんに話しかけることすらできませんでした。

そして「これは何かあるな」と思いました。

 

そしたら予想通り、翌月の定例会で、とんでもない発表がありました。

なんと、会社が合併されるという話でした。

合併先は、T社という聞いたことのない中堅企業です。

 

社長が言います。

「これは、一時的なものだ、今はT社の力を借りるけども、いつか復活する!」

「いつか復活して、もう一度、会社を立て直す」

「会社を立て直すための、一時的なものだと思ってくれ!」

たぶん、誰も信じてないというか、右から左に聞き流したと思います。

それくらい、みんなシラけてました。

 

なぜこんなことになったのか、みんなで考えてみた

定例会の後、いつものように仲良し男子4人組でマックへ向かいました。

こういう話があっても、とくに落ち込むこともないのが当時の僕らでした。笑

いや、どちらかというと今日はたっぷり会社の悪口を言おうぜモードだったように思います。

 

席に着くとさっそく仲間の一人がこう切り出します。

「もしかしたら、おれらのせいで会社がつぶれたんじゃないの?」

「なんで?」

「俺ら何か月あの事務所で研修してた?」

「そうか、現場に出て稼げなかったわけだもんな」

「あんだけの新人を食わせてたんだからカネなくなるだろ」

そこへ、もう一人が口をはさみます。

「でもさ、採用したのは社長だろ、俺らのせいじゃねえだろ」

 

すると、仲間の一人がこういいます。

「もしかして、Aのせいかも、あいつが潰したんじゃないの?」

「あいつヤバイもんな。ありえる。。。」

 

この会社にはAさんという謎のコーディネーターがいたんです。

Aさんは50歳代後半くらいのオッサンで、社員じゃないんですが営業活動的なことをやっていた人のようです。

たまに会社に現れては、「ア゙ウッ、アウッ、アウッ」という恐ろしく下品な笑いをオフィスいっぱいに響かせて帰っていくんです。

 

その笑い方にちなんで、僕たち仲間から通称「アウ」と呼ばれていたオッサン。

※ アウストラロピテクスが由来と言う仲間もいた

 

僕を含めてみんな、「誰だろうあの人は?」って思っていた人です。

でも、ぼくらの仲間の一人が、アウと色々と話をする機会があったとのことなので、話を聞くことにしたんです。

 

暴かれるアウの悪行の数々、これマジモンじゃん!

仲間の一人が楽しそうにアウの話を始めます。

なんでもアウ曰く「おれは政治家の秘書をやってるんだ」とのこと。

本当かどうか知りませんよ。

 

でも、本物か偽物かわかんない「議員バッジ」を僕たちの仲間の一人に見せて、

「これがあれば何でもOKになっちゃうんだよ」

と言ったそうです。苦笑

 

具体的には何がOKになるんですかと聞いたら、

「例えば、駐禁とかで切符切られても、バッジ見せれば一発だよ」

とのこと。

本当かどうか知りませんよ、ハッタリかもしれませんしね。

とにかく「ヤバイヤツ」ということだけはハッキリしました。笑

 

仲間が続けます。

「スリックさんっていたよね、あの人さ、アウにひどい目にあわされたんだよ」

スリックさんってのは会社の営業担当Hさんの友達で、昔はエンジニアをやっていた人です。

遠方にお住まいだったのですが、会社を立て直すためにとHさんが拝み倒して会社に連れて来た優秀なエンジニアです。

 

スリックというのは僕らが勝手につけた通称です。

オールバックの髪型がスリックタイヤみたいだったから「スリックさん」と名付けたのです。

 

ぼくもスリックさんと一緒に研修をした記憶があります。

JAVAの練習をしようと言われて、JAVAの環境を一緒に構築した記憶があります。

その時は、「けっこう、できる人だなあ」と思いましたね。

 

IT業界の多重派遣構造

でも確かに、スリックさんが現場に出る前にすごく怒っていた時があったんです。

その時はなぜ怒っていたのか詳しい事情はわかりませんでした。

 

仲間の一人がスリックさんにも詳しい話を聞いたらしく、それを説明してくれました。

 

スリックさんは、アウのコーディネート(紹介)で、とある現場に入ることになったそうで。

でも想定よりも給料が低かったらしいのです。

「これはやってられない、話が違う、安すぎる、そんな現場やってられない」

とスリックさんは連れてきたHさんを責めます。

あの時僕が見かけた怒りまくってたスリックさんは、これが原因だったんです。

 

でも、案件の紹介元は闇のコーディネーター「アウ」ですから、営業担当のHさんの権力ではどうにもできず。

スリックさんも旧友のHさんを責めてもどうしようもないことはわかっていたのです。

なので「会社をやめる」と言い出したらしいのです。

 

ところが、その辞める案件は、アウのコーディネートした現場ですから、

そうそう簡単にアウも納得しません。

 

ちょっと説明しますと、IT業界は多重派遣構造です。

 

例えば、実際の事例を紹介しましょう。

某大手企業が、40代後半の中堅エンジニア一人に200万円の予算を出しました。

でもエンジニアは200万円を手にすることができずに、間にはいった派遣会社にピンハネされます。

派遣会社はたいがい1社だけでなく2社以上入っていることが普通です。

結局、エンジニアの手に渡るのは、なんと、70万円とか80万円なのです。

間に入った会社は何もしないでも毎月120万円も手にするのです。

 

派遣系のIT社長が儲かるわけです。

ここまでくると、エンジニアは奴隷です。。。

その時の単価がいくらか知りませんが、ピンハネで得られる大金を、アウがみすみす逃すワケがないのです。

 

拉致監禁、、、おいおい、それ犯罪ぢゃん!!

当然、アウは激怒したそうです。

その後、スリックさんは「知ったことか」と現場をバックレて都内をフラフラしてたらしいですが、

アウの追っ手に捕まったらしいのです。(もう、マンガみたい。苦笑)

 

そしてスリックさんを都内某所の事務所に監禁したらしいのです。

 

仲間がスリックさんに「事務所ってどんな感じでした?」と聞いたら、

「怖そうな人たちがいたよ」とのことです。。。苦笑

 

もうおわかりですね。。。

アウはマジモンでした。

 

事務所に連れていかれたスリックさんは、怖い人からさんざん怒鳴り散らされ、脅されたたそうです。

あー、僕が社長に「アタマかち割るぞ」と言われた時とそっくりですね。苦笑

こういうのがピンハネ屋の常套手段なんでしょうかね。。。汗

 

スリックさんは、すきを見て携帯で警察を呼んで、難を逃れたそうです。

その後、アウがどうなったかは知りませんが、おとがめなし、パクられてないことは確実です。

なぜなら、合併の話も、スリックさんの一件があった後に、アウが持ってきた話ですからね。。。

 

これ、ぼくらの仲間が言うには典型的な「潰し屋」じゃないかと。

 

良い話があるよと持ち掛けて、会社をわざと危ない方向に引っ張っておいて、危機に直面させる。

危機に瀕した社長が「困ってます、助けて」と言って来たら今度は救いの手を伸ばす。

「会社を欲しいって人がいるから、いっそのこと会社を売っちゃいましょう」と持ちかけるのです。

そこで、仲介料をガッツリと貰うというピンハネ稼業ですね。

 

振り返ればまさに「潰し屋」案件だったんじゃ・・・?

驚くことに、実際、未経験の僕たち新人が大量に採用されたのは、

大量採用してくれる現場の大募集があったかららしいんです。

それは、後々に僕の上司Sさんが教えてくれた情報です。

その大量採用してくれる案件を見込んでの、僕たちの採用だったらしいのです。。。怖

 

その後、僕たち新人をたくさん雇ったあげく、やっぱり案件がボツになっちゃったということで、

僕らを食わせるための給与で赤字が膨らみ、結果として会社を売り払うことになったのです。

 

でも、その大量募集の案件がアウの紹介だったかまでは仲間の誰も知りませんでしたけどね。

もしもアウの案件だったら、見事に僕らの会社はハメられたということになります。

あながちあり得ない話ではないなあと思いましたね。

 

これからどうする?転職?続ける?

さて、スリックさんとアウの話で大いに盛り上がった僕たちは、しばし沈黙。

そして、今後について話し始めます。

 

「これからどうする?」

「俺はやめるね」

「俺もやめる」

「俺は現場が楽しいから続けるかな」

 

そして僕の回答の順番です。

「俺はどうしようかな、辞めようかな・・・」

 

そうです、その時はまだ進路を決めてませんでした。

新しい会社に行くか、それとも辞めて次の職場を探すか。。。

 

とりあえず、信頼する上司のSさんと話をするために、合併先のT社で話をすることにしました。

そこでなんとも理不尽な話を合併T社の社長から聞くことになります。。。

 

https://inumakedon.com/it-black/

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